1.高知大学における研究活動とSDGsとの関連調査

SDGs は地球規模課題への挑戦であるとともに、日本が直面している社会的課題も包摂したものであり、日本政府としても積極的にSDGs を推進している。昨今、各大学においてもSDGs に関する取組が取りまとめられているところ、今回、本学がSDGs に貢献できる分野・領域を分析することとなった。

 

まず、高知大学の研究活動がSDGs にどのように貢献しているのかを調べる目的で、本学の常勤教員((教授・准教授・講師・助教・特任教員・講座教員)、676 名)の研究分野を対象に、SDGs の17 の目標(Goals)(表1)および169 のターゲットとの関連について調査を行った。調査対象期間は令和元年6 月14 日(金)~令和元年10 月3 日(木)。回答率は76.5 %(676 名中517 名回答)。

調査方法は、各教員は各自の研究テーマを自由記述で入力し、各自の研究テーマがSDGsの17 の目標(Goals)のどれに該当するかを0〜17 個選択した。ある目標に該当すると選択した場合は、その目標の下位のどのターゲットに該当するかを選択した。

SDGsの17の目標(Goals)

​1−1.簡易統計解析

今回の分析では、目標(Goals)までを対象とし、ターゲットは分析対象外とした。本学の中で最も回答の多かったSDGs の目標は、目標3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」(242 名)、次いで目標4「すべての人々への、包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」(164名)であった(図1)。本学の教員の中で医療学系の教員が多いことから目標3 が一番多くなったと考えられる。また大学という教育機関であることを踏まえ、目標4も多かったと思われる。

図1.各SDGs目標に関連する教員数と全体に占める割合
         (複数回答可、n=1,606)

上記結果について、本学の各学系およびセンター・その他の5 種類に分けて集計した結果は図2の通りである。人文社会科学系は目標4 が飛びぬけて多く、自然科学系は目標9・11・12・13・15 がほぼ同程度であった。また医療学系は目標3 が飛びぬけて多く、総合科学系は目標2・3・9・12・14・15 がほぼ同程度であった。センター・その他は目標3が多かった。各学系の特色を反映していると思われる。

図2.各SDGs目標に関連する各部局の教員数
         (複数回答可、n=1,606)

1−2.目標(Goals)のクラスター解析

各教員のSDGs への取組を大学全体で俯瞰するため、目標(Goals)についてクラスター解析を行った。

 

各教員からの回答は、各目標について“該当する/該当しない”の二値属性を持つので、質的類似係数としてJaccard 係数を用いた。距離行列を1-Jaccard 係数で計算し、Ward 法による階層的クラスタリングにより樹形図を描出した(図3)。

 

横軸が各教員(あまりに人数が多いので重なっている)、縦軸が距離(非類似性)を示す。樹形図から8 つのクラスター(#1〜#8)に分類した。

図3.目標(Goals)のクラスター解析

樹形図から、クラスター1(#1)とクラスター4(#4)が近い関係にあった(図3)。クラスター1

(#1)とクラスター4(#4)は、人文社会科学系の教員の割合が高かった(下表)。

 

また、クラスター2(#2)とクラスター6(#6)が最も近い関係にあり、それらとクラスター3(#3)が近い関係にあった。クラスター2(#2)とクラスター6(#6)は自然科学系の教員の割合が高く、クラスター3(#3)は化学系と医療学系の教員の割合が高かった(下表)。

 

クラスター8(#8)、クラスター7(#7)、クラスター5(#5)はこの順にかけ離れていた。クラスター8(#8)は、目標4(教育)のみを選んだ教員の集合で、教育学部門の教員の割合が高かった(下表)。クラスター7(#7)は、どの目標にも該当しないと回答した教員の集合で、理工学部門の教員の割合が高かった(下表)。クラスター5(#5)は、目標3(保健)のみを選んだ教員の集合で、臨床医学部門の教員の割合が高かった(下表)。

各クラスターと目標(Goals)および部門との関連

​各クラスターに属している各部門の人数は、参考資料(1)クラスターと部門との関係を参照。

本学の教員組織は、人文社会科学系(人文社会科学部門、教育学部門)、自然科学系(理工学部門、農学部門)、医療学系(基礎医学部門、連携医学部門、臨床医学部門、医学教育部門、看護学部門)、総合科学系(黒潮圏科学部門、複合領域科学部門、地域協働教育学部門、生命環境医学部門)の4 学系13 部門から構成され、①海洋、②生命/医療、③防災、④環境の重点4分野の研究に加え、多様な文理融合型研究を推進している。各クラスターは、各部門の特性や部門間の融合を反映している。

1−3.目標(Goals)の主成分分析

次に、各クラスターの特性を調べるために、目標(Goals)の主成分分析を行った。第1主成分(PC1)を横軸に、第2主成分を縦軸にして各クラスターの主成分得点をプロットした(図4)。各目標(X1〜X17)の主成分負荷量を、2倍の長さに拡大して原点からのベクトルで示した。

 

第1主成分は目標数の多寡(右に行くほど目標数が多い)を表し、第2主成分は文系と理系の違い(上が文系、下が理系)を表すと推定される。クラスター1は右上に、クラスター2は右下にプロットされた。

 

クラスター解析でクラスター1と近い関係にあったクラスター4は左上に、クラスター2と近い関係にあったクラスター6とクラスター3は左下にプロットされた。クラスター8は左上に、クラスター7は左下にプロットされた。クラスター5は文系と理系の中間に位置した。

 

第1主成分の固有値は4.94 で寄与率が29%であった。第2主成分の固有値が2.42 で寄与率が14%であった。第2主成分までの累積寄与率が43%なので、図4は全情報の半分弱を表していると考えられる。

図4.目標(Goals)の主成分分析

1−4.研究テーマのテキスト分析 ー目標のクラスターとの関連ー

自由記述で入力した各教員の研究テーマの内容をテキスト分析した。テキスト分析はKH Coder3

(https://khcoder.net/dl3.html)を用いて行った。各教員が属しているクラスター番号が判明しているので、研究テーマからの抽出語を主成分分析し、抽出語と各クラスターとの対応分析を行った。

 

結果を図5に示す。横軸に第1主成分、縦軸に第2主成分を示す。丸印は研究テーマからの抽出語を、四角印は目標のクラスターを示す。丸印と四角印の大きさは人数を示す。

第1主成分は文系と理系の違い(右が理系、左が文系)、第2主成分はヒト(人間)との関連性(上がヒト(人間)と関わるもの)を表していると推定される。目標のクラスターとの関連については、クラスター1(左中央)に属する教員の研究テーマには、“社会”、“教育”、“地域”、“経済”の単語が、クラスター2(右下)の研究テーマには、“環境”、“利用”、“生物”、“地球”、“材料”、“植物”が、クラスター5(右上)の研究テーマには、“治療”、“疾患”、“癌”、“免疫”等が読み取れる。

図5.研究テーマからの抽出語と各クラスターとの対応分析

また、研究テーマからの抽出語の共起ネットワーク解析の結果を図6に示す。共起とは、一人の研究テーマ内に同時に現れることを意味し、例えば、右上の“地域”という単語は、“社会”や“経済”や“支援”と一緒に使われることが多いことが読み取れる。

図6.研究テーマテキストの共起ネットワーク

1−5.参考資料

(1)クラスターと部門との関係
1−1)各クラスターと各部門の教員数との関係(二元表)
1−2)各クラスターにおける各部門の教員数の比率
1−3)各部門における各クラスターの教員数の比率
(2)各クラスターにおける各目標(X1〜X17)の平均値と主成分得点(PC1, PC2)

2.SDGs関連論文数の分析

高知大学から産出されたSDGs関連の論文を、Mendeley Data

(https://data.mendeley.com/datasets/87txkw7khs/1)で公表されているSDG1〜SDG16の検索式(各SDGのキーワードを包括したもの)を用いて、SCOPUSデータベースから抽出した。

例えば、高知大学から2014〜2018年の5年間に出されたSDGs Goal 1に関する論文を検索する場合は、以下の検索式をSCOPUSに入力した。

AF-ID ( "Kochi University"   60013623 )  OR  AF-ID ( "Kochi Medical School"   60000088 )  AND  TITLE-ABS-KEY ( ( {extreme poverty}  OR  {poverty alleviation}  OR  {poverty eradication}  OR  {poverty reduction}  OR  {international poverty line}  OR  ( {financial aid}  AND  {poverty} )  OR  ( {financial aid}  AND  {poor} )  OR  ( {financial aid}  AND  {north-south divide} )  OR  ( {financial development}  AND  {poverty} )  OR  {financial empowerment}  OR  {distributional effect}  OR  {distributional effects}  OR  {child labor}  OR  {child labour}  OR  {development aid}  OR  {social protection}  OR  {social protection system}  OR  ( {social protection}  AND  access )  OR  microfinanc*  OR  micro-financ*  OR  {resilience of the poor}  OR  ( {safety net}  AND  {poor}  OR  {vulnerable} )  OR  ( {economic resource}  AND  access )  OR  ( {economic resources}  AND  access )  OR  {food bank}  OR  {food banks} ) )  AND  PUBYEAR  <  2019  AND  PUBYEAR  >  2013 

2−1.高知大学2014〜2018年SDGs関連論文数分析結果

2014年から2018年の5年間に高知大学から出されたSDGs関連の論文数は、1,089件で全論文の42%(全論文数2,592件)を占めた。2014年から2018年の5年間のSCOPUS全体のSDGs関連論文数は、4,757,398件で全論文の31%(全論文数15,178,882件)であった。高知大学は、世界標準よりも比率として多くのSDGs関連論文を産出しており、SDGsに積極的に取り組んでいると思われる。

目標ごとにみると、SDG3、SDG14、SDG13、SDG15の順に多かった。SDG3が非常に多く他が見づらいので、下段のグラフはSDG3を外したものを示している。全世界のSDGs関連論文の目標毎の比率から標準化した値と比較すると、高知大学はSDG14が飛び抜けている特徴があることがわかる。

 

逆に、SDG5、SDG7、SDG8、SDG9、SDG10、SDG11、SDG12、SDG16に関する論文が非常に少なかった。世界的には2番目に論文数の多いSDG7は、エネルギー領域で、本学には工学部がなく、理工学部でもこの領域の研究者が少ない。

 

SDG3、SDG13、SDG15に関しては世界標準と同レベルの論文数を産出していることがわかった。

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